こんにちは、teruruです。
今回は、1966年に発売された『Cannonball Adderley』のライブ・アルバム『Mercy, Mercy, Mercy! Live At “The Club”』をご案内致します。
このアルバムは、パワフルで最高にファンキーなパフォーマンスが収録されています。基本的には、ジャズ系のミュージシャンで録音されたアルバムですが、スムーズでパワフルなプレイが大幅に占められていて聴きやすいと思います。
一般の『ファンク・ミュージシャン』が、このアルバムをプレイしたら、もっとグルーブ感を大切にするあまり、音数が少なくなってしまうと思います。『キャノンボール・アダレイ』のバンドの場合『ジャズ的で複雑な部分』と『ファンキーでパワフルなグルーブ感』を最高にバランスを保っていて、全く飽きさせることのない演奏を行っています。
『ジャズを聴いたことがない人』も『楽器や音楽の知識がない人』でも、問題なく楽しめる名盤です。何度でも新鮮に楽しく試聴でき、じっと澄まして聴かなくてもすんなりイメージが入ってくる音楽だと思っています。
キャノンボール・アダレイについて
『キャノンボール・アダレイ』ですが『マイルス・ディヴィス』のアルバム『マイルストーンズ』で選抜されたことで、有名になりました。特にタイトル曲の『マイルストーンズ』でのスリリングな『アルト・サックス』の演奏が素晴らしかったです。『マイルストーンズ』はマイルス・ディヴィスが『モード・ジャス』での演奏が始まった最初のアルバムにもなります。
モード・ジャズ以前のジャズ・ミュージシャンは、コード進行を基に曲に合わせて演奏していましたが『モード・ジャズ』は『楽曲の構成位置に色々な音階を設定してプレイする』という方法になります。コード進行の場合、演奏を曲に合わせることである程度演奏が様になるかもしれませんが、音階の基にプレイする場合『プレイヤーの創造力』や『演奏経験が影響する』演奏方法になりますので、かなりのセンスが要求されるものになります。
また『キャノンボール・アダレイ』はいくつか魅力的なアルバムも出しています。マイルス・ディヴィスが参加したジャズ・ブルースの名盤『サムシン・エルス』や『ボサノバ・ミュージシャン』と共演した『キャノンボールズ・ボサノバ』も楽しめますので、興味がある方は、ご試聴頂きたいと思います。
ジャズ・ファンクの名盤のポイント
- ジョー・ザビヌルのピアノ・キーボード・プレイ
- バランスのよい選曲
- キャノンボール・アダレイのプレイ・スタイル
ジョー・ザビヌルのピアノ・キーボード・プレイ
『ジョー・ザビヌル』は『ジャズ・ミュージック』であろうが『フュージョン・ミュージック』であろうが『音楽センスでプレイする』というよりは『アイディアの豊富さでプレイ』している印象が強い。今回のアルバム『マーシー・マーシー・マーシー』では『リズミカルな伴奏』『鋭いフレーズでの伴奏』が印象的です。
①『曲を作って発表して』②『次の新しいことに取り組み』③『更に先に進むこと』を常に繰り返してきたアーティストだと思っています。作ってきた楽曲にあまり執着しないタイプに感じます。例えば、今回のライブ・アルバムで『アイディアを出し切った』ので、もうすでに『新しいアイディアが貯まりきっている』から『次のアルバムでアイディアを出し切りたいんだ』というような感じが伝わってきます。
今回、収録されている楽曲『マーシー・マーシー・マーシー』は、現在では『フュージョン・ミュージック』の『スタンダード・ナンバー』となっていますが、作曲者本人は、名曲になろうが、名曲になるまいが、楽曲の価値にとらわれずその先を突き進むタイプだと思います。本人が『マーシー・マーシー・マーシー』も含めて代表曲の再演することがほとんどなかったからです。
当時としては『マーシー・マーシー・マーシー』では『フェンダー・ローズ』という『キーボード』をプレイをして、新進的なことを行っていますが、終わったことに対して振り返らずに、常に先に進んでいて、凄いプロフェッショナルな精神だと思っています。
バランスのよい選曲
このアルバムは『キャノンボール・アダレイ』とその弟の『ナット・アダレイ』と『ジョー・ザビヌル』の3人の楽曲を均等に配置して成り立っていますが、選ばれた楽曲が全体的に『ファンキー・ミュージック的』『ソウル・ミュージック的』なフィーリングのバランスが抜群で飽きさせないです。
ジャズ的なフィーリングの楽曲が極力配置せずに『ファンキー・ミュージック的』『ソウル・ミュージック的』な楽曲に絞って『ジャズ・アルバムに聴こえないよう』にプレイしているように見えます。
キャノンボール・アダレイのプレイ・スタイル
『キャノンボール・アダレイ』自身、もともと『ブルース・プレイヤー』でしたが『マイルス・ディヴィス』のアルバム『マイルス・ストーンズ』『カインド・オブ・ブルー』に携わったことで『ダイナミックなプレイ』と『モード奏法を組み合わせた独特なフレージング』を織り交ぜたスタイルになったと思います。
同時期『マイルス・ディヴィス』のバンドには『ジョン・コルトレーン』がいたので、更にプレイに磨きがかかったのだと思っています。当時のライブを試聴すると、2人ともプレイ・スタイルが違いますが、ほぼ互角に渡り合っている様子が確認できます。その時のお互いのサックスの音色はレーザー・ビームのように響いているように感じました。
アルバム『マーシー・マーシー・マーシー』では、弟の『ナット・アダレイ』のダイナミックな『コルネット』の演奏に合わせるようにプレイしていて、バトル形式になっている訳ではないので、自由で生き生きとした素晴らしいプレイを披露しています。ところどころに超絶プレイも織り交ぜていることも凄いと思います。
Albumlist |
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1. Fun |
2. Games |
3. Mercy, Mercy, Mercy |
4. Sticks |
5. Hippodelphia |
6. Sack O’ Woe |
Players |
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Cannonball Adderley – Alto Sax |
Nat Adderley – cornet |
Joe Zawinul – Piano, Rhodes piano |
Victor Gaskin – Acoustic Bass |
Roy McCurdy – Drum |
楽曲解説
1. Fun
ファンキーでダイナミックなピアノ伴奏が印象的な楽曲。
ピアノ伴奏に合わせて、えぐるような『キャノンボール・アダレイ』の『アルト・サックス』のプレイは凄いです。手数の多いドラム・サウンドも楽しめます。オープニング・ナンバーとしてカッコいいです。
2. Games
ファンキーなグルーブ感でブルース・フィーリングが特徴の楽曲。
ファンキーなグルーブ感で包み込んでいますが、アプローチは『ブルース・スタイル』または『ジャズ・ブルース・スタイル』でプレイされています。ストレートに響く為か心地よく聴こえます。
3. Mercy, Mercy, Mercy
ソウル・ミュージック風のマイルドなグルーブ感のある楽曲。
柔らかい音色の『フェンダー・ローズ』のキーボードの伴奏でマイルドで心地よいグルーブ感を出しています。『マーシー・マーシー・マーシー』では、楽曲のイメージを伝えるだけソロはプレイされていませんが、素晴らしい仕上がりだと思います。
4. Sticks
リズミカルでスインギーなファンキー・ソング。
全体的にダイナミックなソロが展開されていきます。跳ねるようなピアノの伴奏が最高です。
5. Hippodelphia
独特なグルーブ感のジャズ的な楽曲。
どことなく『コード進行』『フレージング』が『ジョー・ザビヌル』が結成するフュージョン・バンド『ウェザー・リポート』の『プロトタイプ・ソング』のようなイメージにも感じます。全体的にジャズっぽさを感じさせるソロ演奏を行っていて良いと思います。
6. Sack O' Woe
リズミカルでスインギーなファンキー・ソング。
全体的にブルース的にパワフルなソロが展開されています。後半にベース・ソロが披露されています。
その他関連記事はこちらになります。
『静寂なフュージョン・ミュージックの幕開け『In A Silent Way』 / Miles Davis』
『実験的なバンドの完成度を誇る『Heavy Weather』 / Weather Report』
今回は、1966年に発売された『Cannonball Adderley』のライブ・アルバム『Mercy, Mercy, Mercy! Live At “The Club”』をご案内致しました。
機会がありましたら、楽しんでみて下さい。