こんにちは、teruruです。
今回、1969年に発売された『Miles Davis』のアルバム『In A Silent Way』をご案内致します。
このアルバムは『マイルス・ディヴィス』が『ジャズ・ミュージック』から『フュージョン・ミュージック』に流れが完全に切り替わったアルバムになります。
『イン・ア・サイレント・ウェイ』発売の前に『マイルス・イン・ザ・スカイ』『キリマンジャロの娘』等で『フェンダー・ローズ(エレクトリック・キーボード)』や『エレクトリック・ベース』などが導入されて『ジャズ・ミュージック』が『エレクトリック化』されましたが、あくまでも電子楽器が導入されたというだけで『ジャズ・ミュージック』から抜け出したサウンドではありませんでした。
『イン・ア・サイレント・ウェイ』から、劇的な『フュージョン・サウンド』に変化が始まりました。このアルバムは『フュージョン・ミュージック』の凄みのあるプレイではなく、抑制された静寂で美しいサウンドを表現しています。特にタイトル曲の『イン・ア・サイレント・ウェイ』は幻想的で美しい楽曲だと思います。
『フュージョン・ミュージック』を知らない人でも、心地よく聴けるアルバムだと思います。特にギター・リストの『ジョン・マクラフリン』のクリーンで撫でるようなクリアなサウンドとジャズ的な要素を減らして、美しいメロディーを奏でていて、感動的なアルバムに仕上げています。
静寂なフュージョン・ミュージックの幕開けのポイント
- ジョー・ザビヌルとの共作
- ジョン・マクラフリンのレコーディング参加
- 4ビート的なジャズ要素を排除している
ジョー・ザビヌルとの共作
『マイルス・ディヴィス』と『ジョー・ザビヌル』との接点は、名盤『カインド・オブ・ブルー』の制作前に、ピアニストの『ビル・エヴァンス』がバンドを脱退する事で、ピアニストのオーディションを受けたが、最終的に『ウイントン・ケリー』と『ジョー・ザビヌル』が残ったが、最終的に『ウイントン・ケリー』が選ばれた為、バンドに加入する事はありませんでした。
その後『ジョー・ザビヌル』は『キャノンボール・アダレイ』のバンドに加入して『マーシー・マーシー・マーシー』等の素晴らしいアルバムを残しました。『マイルス・ディヴィス』は『キャノンボール・アダレイ』のアルバム『カントリ・プリチャー』での『ジョー・ザビヌル』の『フェンダー・ローズ』のキーボード・サウンドが素晴らしかった為『ジョー・ザビヌル』をレコーディングに招待しています。
特にタイトル曲の『イン・ア・サイレント・ウェイ』は、素晴らしい『メロディー』と『フィーリング』での仕上がりになっています。元々『ジョー・ザビヌル』の楽曲であったが、複雑なコード進行であったものを『マイルス・ディヴィス』がシンプルなコード進行にアレンジして完成したようです。曲調としては、穏やかな湖で響いてくるようなイメージだと思います。
ジョン・マクラフリンのレコーディング参加
今まで『マイルス・ディヴィス』のバンドでは『ジョー・ベック』や『ジョージ・ベンソン』のような優秀なギター・リストがレコーディングに参加していましたが、あまり納得した成果は得られなかったようです。
今回の『ジョン・マクラフリン』のプレイは、アルバムの完成度を変えてしまうほど重要な役割をしています。本来でしたら『サックス』や『ピアノ』がメインとなって曲を盛り上げていきますが、今回は『ジョン・マクラフリン』の素晴らしいギター・プレイが主体になっています。
もし純粋なジャズ系ギター・リストがレコーディング参加したら、ここまで素晴らしいアルバムにならなかったと思います。迷いのない美しい素晴らしいプレイに感動すると思います。
4ビート的なジャズ要素を排除しているサウンド
完全に以前のような『4ビート・ジャズ的な要素』を使用していない点が『アルバム・サウンド』を新鮮に響かせていると思っています。『ロック・ミュージック的』または『ファンク・ミュージック的』なサウンドが採用されていて、静寂な雰囲気を出していると思います。
レコーディングもユニークで、キーボード奏者は『チック・コリア(フェンダー・ローズ)』がメインですが『ハービー・ハンコック(フェンダー・ローズ)』と『ジョー・ザビヌル(オルガン)』での『トリプル・キーボード』でレコーディングされていて、何とも言えない『ポリリズム的な伴奏』を行っています。色々のスタイルでの伴奏も聴きごたえがあります。
このアルバムから始まった『フュージョン・ミュージック趣向』が、この後『マイルス・ディヴィス』の音楽的実験で1枚ごとに性質の違うアルバムを発表されることになります。ですのでその後『イン・ア・サイレント・ウェイ』と全く同じフィーリングのアルバムは制作されていません。ここから『フュージョン・ミュージック』が始まったと言っても間違いないと思っています。
Albumlist |
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1. Shhh / Peaceful |
2. In A Silent Way / It’s About That Time |
Players |
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Miles Davis – Trumpet |
Wayne Shorter – Soprano Sax |
John McLaughlin Electric Guitar |
Joe Zawinul – organ |
Chick Corea – Fender Rhodes |
Herbie Hancock – Fender Rhodes |
Dave Holland – Bass |
Tony Williams – Drum |
楽曲解説
1. Shhh / Peaceful
16ビートで穏やかなファンク・ミュージック的な楽曲。
タイム感が効いた『ジョン・マクラフリン』のクリーンなギター・プレイが美しいです。ギター・プレイの流れに乗って『マイルス・ディヴィス』の素晴らしく歌い上げる『トランペット』空間を潜り抜けるような『ウェイン・ショーター』の『ソプラノ・サックス』が素晴らしいです。『ハービー・ハンコック』の伴奏と思われるグルーブ感のあるキーボードの演奏も素晴らしいです。
2. In A Silent Way / It's About That Time
美しい穏やかな楽曲とファンキーなグルーブ感のある楽曲の組み合わせ。
『イン・ア・サイレント・ウェイ』では、美しい穏やかな楽曲を『エレクトリック・ギター』と『ソプラノ・サックス』で素晴らしいメロディーを表現しています。『イッツ・アバウト・ザット・タイム』は、ファンキーなグルーブ感のある楽曲。『ジミ・ヘンドリックス的なイメージ』も感じられます。このアルバムでは『ミディアム・テンポ』でプレイされていて、知的なプレイが展開されています。ライブになると、さらにパワフルなアレンジで演奏されています。
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『ハイテンションで破壊的なパフォーマンス『Live At The Fillmore East, March 7, 1970: It’s About That Time』 / Miles Davis』
『タイトでクールなファンク・サウンド『A Tribute To Jack Johnson』 / Miles Davis』
『反転的なコンセプト・アルバム『Live-Evil』 / Miles Davis』
『クールで熱いライブ・アルバム『We Want Miles』 / Miles Davis』
『クールで最高の完成度を誇るアルバム『TUTU』/ Miles Davis』
ウェイン・ショーター関連記事はこちらになります。
『瞬発的に鋭く反応する新進ジャズ『Footprints Live!』 / Wayne Shorter』
ジョー・ザビヌル関連記事はこちらになります。
『ジャズ・ファンクの名盤『Mercy, Mercy, Mercy! Live At “The Club”』 / Cannonball Adderley』
『実験的なバンドの完成度を誇る『Heavy Weather』 / Weather Report』
今回、1969年に発売された『Miles Davis』のアルバム『In A Silent Way』をご案内致しました。
機会がありましたら楽しんでみてください。