こんにちは、teruruです。
今回は2002年に発売された『Wayne Shorter』のアルバム『Footprints Live!』をご案内致します。
このアルバムの特徴としては、前作の『ハイライフ』までは、エレクトリックなフュージョン・ミュージックのアルバムを作ってきましたが、今回アコースティック・ジャスに回帰したアルバムになります。アコースティック・ジャスに回帰したということで、以前のアコースティック・ジャズ・サウンドに戻るのではと思いましたが、驚くべき更なる進化したサウンドで登場しました。
今回、カルテットでアルバムを収録しています。ピアノの『ダニーロ・ペレス』ベースの『ジョン・パティトゥッチ』ドラムの『ブライアン・ブレイド』が選抜されています。ここで表現されているサウンドは、一般的な4ビート・ジャズではなく、フィーリングに合わせて変化をつけた瞬発的なジャズを演奏しています。ミディアム・テンポのものが多く、間の取り方が絶妙なサウンドで新感覚で聴けるジャズだと思っています。
一般的なジャズの場合「何をやっているかわからない」や「聴いてられない」とか思う人が多いと思いますが、音をとことん詰め込んでいるサウンドではないので、ジャズを知らない人でも問題なく試聴できるアルバムだと思っています。
瞬発的に鋭く反応する新進ジャズのポイントとして
- ウェイン・ショーターの先の読めないサックスのフレージング
- ダニーロ・ペレスのスパニッシュ風のピアノ
- ベースとドラムの瞬発力
ウェイン・ショーターの先の読めないサックスのフレージング
ウェイン・ショーターの行き先ががわからない、または先の読めないサックスのフレージングが魅力になります。独自の考えでプレイしていると思いますが、フリー・ジャズのようなフレーズにならないところは流石です。
1960年代のマイルス・デイヴィスのオリジナル・アルバムでは『モード(音階)』主体で演奏していましたが、当時のライブでは、時代背景もあり、かなりフリー・ジャズ的なアプローチを行っていました。その頃のライブは凄い演奏をしていましたが、必ずしも聴きやすいサウンドとは思いませんでした。
他の3人のメンバーは、ウェイン・ショーターの動きを見ながら、この上なく瞬間的に反応しているように動いているように思います。
ダニーロ・ペレスのスパニッシュ風のピアノ
ダニーロ・ペレスは、今回のアルバムで初めて試聴しました。今までかなり大物ジャズメンと共演しているようですね!
演奏を聴いてみて思ったことは『チック・コリア風のタッチと音使い』『ハービー・ハンコック風の間の取り方とフレージングのようなセンス』を感じました。多分チック・コリアでしたら、もっと音数が多いものになり、ハービー・ハンコックなら、もっと独自でクセのサウンドになったと思います。
バランス面を考えて、今回ダニーロ・ペレスが選抜されプレイしたことはベストだと思っています。彼のプレイにより独特の緊張感を出しているので、バンドのサウンドが引き締まっている感じがします。
ベースとドラムの瞬発力
このアルバムを聴いていて思ったことは、ベースとドラムはじっと待ち構えてながら、ビートを刻み、自由にダイナミックにプレイしています。
このアルバムの少し前に、ハービー・ハンコックの『ディレクションズ・イン・ミュージック』というアルバムに『ジョン・パティトゥッチ』と『ブライアン・ブレイド』が参加していましたが、その時の演奏と今回の演奏を比べると、はるかに今回の演奏の方が奔放で生き生きしていることが感じられます。
色々なジャズを聴いてきましたが、実際にこういった緊張感のあるパフォーマンスを行っているジャズ・アルバムはたくさんありそうですが、自身で聴いた中では今回が初めてだと思います。
『マイルス・デイヴィス』『ジョン・コルトレーン』『キース・ジャレット』にもない緊張感があると思います。
Albumlist |
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1. Sanctuary |
2. Masquelero |
3. Valse Triste |
4. Go |
5. Aung San Suu Kyi |
6. Footprints |
7. Atlantis |
8. JuJu |
Player |
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Wayne Shorter – Tesor sax, Soprano sax |
Danilo Perez – Piano |
John Patitucci – Acoustic Bass |
Brian Blade – Drums |
楽曲解説
1. Sanctuary
オリジナルはマイルス・デイヴィスのアルバム『ビッチェズ・ブリュー』の収録曲。
幻想的な10分ほどの大曲。
オリジナルは、ルパートなテンポで、マイルス・デイヴィスがトランペットを吹いていて、ところどころイン・テンポに変わったりする。独特な楽曲。
『Footprints Live!』では
新たにいくつかのリフなどを盛り込まれ、曲の形が明確になり魅力的なサウンドになっている。次のマスクァレロの前奏曲のようにも聴こえる。
2. Masquelero
オリジナルはマイルス・デイヴィスのアルバム『ソーサラー』の収録曲。
スパニッシュ風の格調のある楽曲。
オリジナルでは、ハービー・ハンコックが緊張感ある素晴らしい伴奏が特徴的でした。スパニッシュ風のアプローチでトランペットとサックスでプレイされていました。
『Footprints Live!』では
ダニーロ・ペレスの細かい伴奏が印象的で、今回は終盤に進むにつれて盛り上がるようなアレンジを行っています。ブライアン・ブレイドのドラムが破壊的でカッコいいです。
3. Valse Triste
オリジナルはウェイン・ショーターのアルバム『ザ・スムースセイヤー』の収録曲。
クラシック作曲家のジャン・シベリウスの楽曲をアレンジした楽曲。
オリジナルは、ミディアム・テンポの中でウェイン・ショーターとフレディー・ハバートで流れるようなスムーズなプレイをしていました。心地よい楽曲です。
『Footprints Live!』では
ダニーロ・ペレスが超絶プレイを披露しています。プレイヤーに合わせて、テンポを変えたり、リズムを変えたり、リズム隊も素晴らしいプレイをしています。チームワークが凄いです。
4. Go
オリジナルはウェイン・ショーターのアルバム『スキツォフリーニア』の収録曲。
民族音楽の様なメロディーが印象的な楽曲。
オリジナルでは、メロディーを管楽器3管で演奏したり、フルートが入っていたりとカラフルに仕上がっています。
『Footprints Live!』では
ウェイン・ショーターのサックスをシンプルに聴かせています。ダニーロ・ペレスの伴奏の素晴らしいです。
5. Aung San Suu Kyi
オリジナルは、ハービー・ハンコックとのデュオ・アルバム『1+1』の収録曲。
民族音楽的なメロディーが印象的な楽曲。
オリジナルでは、ルパートでダイナミックに空に突き抜けるかのようなサックスを披露していました。素晴らしいパフォーマンスでした。
『Footprints Live!』では
ミディアム・テンポにアレンジされていて、ウェイン・ショーターが吸い付くよう感じで全編サックスを吹きまくっています。フィーリングを崩さない素晴らしい演奏です。
6. Footprints
オリジナルは、ウェイン・ショーターのアルバム『アダムズ・アップル』の収録曲。
鋭いスパニッシュ風のメロディが印象的な楽曲。
オリジナルでは、味わい深いプレイで素晴らしかったが、やはりマイルス・デイヴィスの『マイルス・スマイルズ』の方が、マイルス・デイヴィスの白熱したトランペットとトニー・ウィリアムスの凄みのあるドラムも聴くことが出来ます。
『Footprints Live!』では
スリリングなプレイを展開しています。ウェイン・ショーターとダニーロ・ペレスのインター・プレイもなかなかよいと思います。
7. Atlantis
オリジナルは、ウェイン・ショーターのアルバム『アトランティス』の収録曲。
機械的なコード進行に突き抜けるような重圧なメロディーが印象的な楽曲。
オリジナルでは、ストリングス的な機械的なコード進行をバックにサックスとヴォイスでメロディーを演奏している独特な楽曲。
『Footprints Live!』では
今回は、ピアノとリズム隊で曲の輪郭を作り、ウェイン・ショーターは自由にプレイしています。
8. JuJu
オリジナルは、ウェイン・ショーターのアルバム『ジュジュ』の収録曲。
語るようなメロディーが印象的な楽曲。
オリジナルでは、アップ・テンポで演奏されてました。モード・ジャズ期でしたので、マッコイ・タイナーのピアノとエルヴィン・ジョーンズのドラムが印象的でした。特に印象的なメロディーと楽曲です。
『Footprints Live!』では
ゆったりとしたテンポでプレイしています。オープニングのアレンジがカッコいいです。
その他関連記事はこちらになります。
『静寂なフュージョン・ミュージックの幕開け『In A Silent Way』 / Miles Davis』
『ハイテンションで破壊的なパフォーマンス『Live At The Fillmore East, March 7, 1970: It’s About That Time』 / Miles Davis』
『実験的なバンドの完成度を誇る『Heavy Weather』 / Weather Report』
今回は2002年に発売されたWayne Shorterのアルバム『Footprints Live!』をご案内致しました。
機会がありましたら、楽しんでみてください。