こんにちは、teruruです。
今回、1971年に発売された『Miles Davis』のアルバム『A Tribute To Jack Johnson』をご案内させて頂きます。
このアルバムは、『キャッチなリズムとグルーブ感のある楽曲』が納められています。サウンド的には、『ファンク・ミュージック』と『ロック・ミュージック』の中間のサウンドになります。
初めて『マイルス・デイヴィス』のアルバムに触れるものとしてよいアルバムですし、特にロック好きの方に聴いて頂きたいアルバムです。『ア・トリビュート・トゥ・ジャック・ジョンソン』は、実際『ファンク的なベース・ラインが基盤』に なっていますが、『クールでタイトなロック・ミュージック』に近いサウンドを表現していると思います。
アルバムは2曲入りで、1曲30分ぐらいの大作になっていますが、スムーズに楽しめるアルバムだと思っています。特に『ライト・オフ』はグルーブ感もよく心地よく聴くことが出来ると思います。
タイトでクールなファンク・サウンドのポイント
- ジョン・マクラフリンを主体とするサウンド
- テオ・マセロの編集技術
- ビッチェズ・ブリュー期よりもシンプルなサウンド構築
ジョン・マクラフリンを主体とするサウンド
『ア・トリビュート・トゥ・ジャック・ジョンソン』 をレコーディングしていた頃は、特に『ジョン・マクラフリン』を主体となっている『レコーディング・セッション』が多かったと思います。
今回の収録曲『ライト・オフ』では、ドラムの『ビリー・コブハム』とをジャムをしていたところに『マイルス・デイヴィス』が入ってきて、かなり長いソロを繰り広げ、それが楽曲として採用されたという事が経緯のようです。
『ジョン・マクラフリン』は、とにかく『カッティング・ギターのバリエーション』や『フレーズのセンス』『ギター・サウンド』等、当時『マイルス・デイヴィスが望んでいるギター・リストの要素を全て満たしていたのでないか』と思います。
『マイルス・デイヴィス』のコンピレーション・アルバム『ディレクションズ』収録曲の『デュラン』『ウィリー・ネルソン』や 『マイルス・デイヴィス』の アルバム『ビック・ファン』の収録曲『ゴー・アヘッド・ジョン』なども合わせて試聴頂くと、当時『ジョン・マクラフリン』が特にユニークな『ギター・リスト』であったことがわかると思います。
『爆発するようなファズ・サウンド』『歯切れのよいクランチ・サウンド』『クリーン・サウンド』『ワウ・サウンドをバランスよく使い』ながら『マイルス・デイヴィス』とのレコーディングに臨んでいることは凄い事だと思っています。
テオ・マセロの編集技術
とにかくフュージョン期以降の『マイルス・デイヴィス』のアルバムでは、『プロデューサー』の『テオ・マセロ』により、かなり『大胆な編集』が行われています。
『ライト・オフ』では曲の中間に『マイルス・デイヴィス』の『ルパートのソロを挿入』したり、『イエスターナウ』では、曲の中間より『ディレクションズ』収録曲の 『ウィリー・ネルソン』を追加したり『実験的な編集』を行っていて、かなりユニークな仕上がりになっていると思います。
この編集に関しては、『マイルス・デイヴィス』の指示によるものだとは思いますが、特に『ライト・オフ』では効果的な編集だったと思います。メリハリの効いた楽曲になっているので素晴らしいと思います。
『テオ・マセロ』 がいなかったら、もっとワンパターンで面白味のないサウンドになっていたのではないかと思っています。
ビッチェズ・ブリューよりもシンプルなサウンド構築
この時期の音楽としては、4つぐらいの音楽性が同時進行していたのではないかと思っています。
1つ目は、『チック・コリア』の在籍していた時期の『マイルス・デイヴィス』のアルバム『ビッチェズ・ブリュー』のサウンド。『ポリリズム』が効いていて、『アグレッシブなフュージョン・サウンド』だと思います。
2つ目は、『ジョン・マクラフリン』主体の『ロック的なサウンド』。今回のアルバム 『ア・トリビュート・トゥ・ジャック・ジョンソン』 の楽曲のようにシンプルに響く楽曲が特徴的だと思います。
3つ目は、『ジョー・ザビヌル』主体としていた『幻想的なサウンド』。アルバム『ビッチェズ・ブリュー』収録曲『サンクチュアリ』や『マイルス・デイヴィス』のアルバム『ビッグ・ファン』の収録曲『リコレクションズ』等の複雑で難しいサウンドが該当すると思います。
4つ目は、『キース・ジャレット』と『ジャック・ディジョネット』が主体としていた『独特なクセのあるファンキー・サウンド』。『マイルス・デイヴィス』のアルバム『ライブ・イービル』を試聴頂ければ、『クセのあるファンキー・サウンド』が確認できると思います。
どの音楽性も、とてもユニークで楽しめると思いますが、一番聴きやすさという点では、『ジョン・マクラフリン』主体のロック的なサウンド ではないかと思っています。 『ア・トリビュート・トゥ・ジャック・ジョンソン』は、『ビッチェズ・ブリュー』 の頃よりもシンプルな構成が素晴らしい名盤だと思っています。
Albumlist |
---|
1. Right Off |
2. Yesternow |
Players |
---|
Miles Davis – Trumpet |
Steve Grossman – Soprano Sax |
John McLaughlin – Electric Guitar |
Herbie Hancock – Organ |
Michael Henderson – Electric Bass |
Billy Cobham – Drum |
Bennie Maupin – Bass Clarinet (Willie Nelson Only) |
Sonny Sharrock – Electric Guitar (Willie Nelson Only) |
Chick Corea – Fender Rhodes (Willie Nelson Only) |
Dave Holland – Electric Bass (Willie Nelson Only) |
Jack DeJohnette – Drum (Willie Nelson Only) |
楽曲解説
1. Right Off
ファンキーでグルーブ感のあるベース・ラインが心地よい楽曲。
ワン・パターンのシンプルな『ベース・ライン』ではあるが、『ジョン・マクラフリン』のバリエーションの効いた『ギター・カッティング』が素晴らしいです。その中でプレイしている『マイルス・デイヴィス』の『トランペット・ソロ』、その後に続くパワフルな『ソプラノ・サックス』、『ハービー・ハンコック』の鋭い『オルガン・ソロ』も素晴らしいです。曲の中間に『マイルス・デイヴィス』の『ルパートのソロ』を挿入したり編集も施されていたりします。クールでよいソロだと思います。『18:45にプレイされるギター・フレーズ』は、その後『ジャック・ジョンソンのテーマ』としてプレイされることとなります。『スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン』の楽曲『シング・ア・シンプル・ソング』のイメージを基にプレイしたフレーズのようです。
2. Yesternow
タメの効いたベース・ラインが印象的な楽曲。
『ジェイムス・ブラウン』の楽曲『セイ・イット・ラウド・アイム・ブラック・アンド・アイム・プラウド』の『ベース・ライン』を基に作られているようです。クールに展開されていきますが、『ソプラノ・サックス』のソロが盛り上がってきている辺りで『ウィリ―・ネルソン』に変わってしまいます。ユニークな編集が施されています。
『Willie Nelson』については、下側のリンク『ハイテンションで破壊的なパフォーマンス『Live At The Fillmore East, March 7, 1970: It’s About That Time』 / Miles Davis』を参照して頂きたいと思います。
マイルス・デイヴィス関連記事はこちらになります。
『静寂なフュージョン・ミュージックの幕開け『In A Silent Way』 / Miles Davis』
『ハイテンションで破壊的なパフォーマンス『Live At The Fillmore East, March 7, 1970: It's About That Time』 / Miles Davis』
『反転的なコンセプト・アルバム『Live-Evil』 / Miles Davis』
『クールで熱いライブ・アルバム『We Want Miles』 / Miles Davis』
『クールで最高の完成度を誇るアルバム『TUTU』/ Miles Davis』
今回、1971年に発売された『Miles Davis』のアルバム『A Tribute To Jack Johnson』をご案内させて頂きました。
機会がありましたら、音楽を楽しんで頂きたいと思います。