こんにちは、teruruです。
今回、1971年に発売された『Miles Davis』のアルバム『Live-Evil』をご案内させて頂きます。
タイトルでもわかるように『ライブ・イビル』は、反転的なコンセプトなアルバムになります。『Live』のスペルを反対に書くと『Evil』になります。タイトルもこのような遊び心を出したようなタイトルをつけています。
このアルバムは『静と動』のような楽曲配置になっています。『動作的にグルーブ感のある楽曲』と『静寂でクールな楽曲』に分かれているユニークなアルバムで、このアルバムが『マイルス・デイヴィス』のを初めて聴く人が楽しめるかは、わからないというところになります。
楽しく聴けるかということの目安としては、以前ご案内させて頂きましたマイルス・デイヴィスのアルバム『トリビュート・トゥ・ジャック・ジョンソン』が楽しめるようでしたら、気に入って頂ける可能性はあるかもしれません。全体的に『クールでタイトなファンク・サウンド』が印象的なアルバムだと思っています。
反転的なコンセプト・アルバムのポイント
- キース・ジャレットとジャック・ディジョネットの音楽主導
- ジョン・マクラフリンの参加
- ライブ音源とスタジオ音源が混在させたコンセプト
キース・ジャレットとジャック・ディジョネットの音楽主導
静寂なスタジオの楽曲では、『マイルス・デイヴィス』自身が音楽的に主導していると思いますが、特にライブの場合、この『ライブ・イビル』の頃は、『キース・ジャレット』と『ジャック・ディジョネット』が音楽的な主導をしていると思います。
『ライブ・イビル』を聴いて頂ければ、かなり独特なグルーブ感の楽曲で演奏していることがわかります。『キース・ ジャレット』は『フェンダー・ローズ』の『キーボード』で、ユニークなグループ感に軽やかに乗るようにプレイしていて、今までのアルバムとは違うフィーリングを出していると思います。また『ジャック・ディジョネット』が『リズム・テクスチャー』を担当しているのではないかと思っています。
以前ご案内させて頂きました『マイルス・デイヴィス』のアルバム『ライブ・アット・ザ・フィルモア・イースト』では、『チック・コリア』がキーボードを弾いていて『攻撃的でメンバーを煽るような物凄い伴奏』をしていましたが、『キース・ ジャレット』は真逆で『グルーブ感を出して楽曲を包み込むようなプレイ』をしています。
『キース・ ジャレット』がプレイすることで『音楽の質を変えて独特なグルーブ感を生んでいる』のだと思っています。そこで『マイケル・ヘンダーソン』の『ユニークなファンキー・ベース』が軸となり、『ジャック・ディジョネット』の『パワフルなポリリズム的なドラム』が自由奔放ににプレイを行うことで、さらにダイナミックで存在感のあるものになっていると思います。
特に動的な楽曲は『ライブ・イビル』でしか味わえないフィーリングがあり楽しめると思います。
ジョン・マクラフリンの参加
『ライブ・イビル』でも、『ジョン・マクラフリン』は、かなり目立ってはいますが『ライブ・イビル』ではどちらかというとスパイス的な役割だと思っています。
『ジョン・マクラフリン』の凄さは『「ハードロック的」であろうが、「ロック的なファンク・サウンド」であろうが、「グルーブ感のあるファンク・サウンド」であろうが、「存在感のある独自のトーン」と「独自のプレイで表現出来る素晴らしいプレイヤー」』だと思っています。
『マイルス・デイヴィス』の1970年代のアルバムで、複数のアルバムに『ジョン・マクラフリン』が参加していることは、そういった部分が気に入られていたためであると思います。
『ライブ・イビル』では、『ジョン・マクラフリン』が参加していることで、かなりメリハリががついた存在感のアルバムになっていると思っています。
ライブ音源とスタジオ音源が混在させたコンセプト
『ライブ・イビル』は、『2種類の音源』が収録されています。1つは『ライブ音源での動作的でグルーブ感のあるサウンド』、もうひとつは『スタジオ音源での静寂でクールなサウンド』を配置しているユニークなアルバムです。
楽曲の時間配分もよいと思います。例えば『マイルス・デイヴィス』のアルバム『ビッグ・ファン』というアルバムがあります。このアルバムの中では、静寂でクールなつかみどころのないサウンドの楽曲が、1曲に20分~30分あったりします。もし初めて聴く人にとっては、辛いものでしかないと思います。
『ライブ・イビル』では、 静寂でクールなサウンドが数曲存在はしていますが、『長くても4分程度』に抑えられている点もよいと思います。その反対に『動作的でグルーブ感のある約30分の長尺な楽曲』もありますが、ユニークなアレンジであるために違和感なく楽しめる内容だと思います。
そういったことを、色々と含めて『マイルス・デイヴィス』のプロデュース能力が素晴らしく発揮されたユニークなアルバムだと思います。
Albumlist |
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1. Sivad |
2. Little Church |
3. Medley: Gemini/Double Image |
4. What I Say |
5. Nem Um Talvez |
6. Selim |
7. Funky Tonk |
8. Inamorata And Narration by Conrad Roberts |
Players |
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Miles Davis – Trumpet |
Gary Bartz – Soprano Sax, Flute (1, 4, 7, 8) |
John McLaughlin – Electric Guitar (1, 3, 4, 7, 8 ) |
Keith Jarrett – Fender Rhodes, Organ (1, 4, 7, 8) |
Michael Henderson – Electric Bass (1, 4, 7, 8) |
Jack DeJohnette – Drum (1, 3, 4, 7, 8 ) |
Airto Moreira – Percussion (1, 3, 4, 7, 8 ) |
Hermeto Pascoal – Drum, Whistling, Voice, Fender Rhodes (2, 5, 6) |
Wayne Shorter – Soprano Sax (3) |
Joe Zawinul – Fender Rhodes (3, 5) |
Chick Corea – Fender Rhodes (3, 5) |
Steve Grossman – Soprano Sax (2, 5, 6) |
Dave Holland – Acoustic Bass (2, 3) |
Ron Carter – Acoustic Bass (5, 6) |
Billy Cobham – Drum (3) |
Khalil Balakrishna – Electric Sitar (3) |
楽曲解説
1. Sivad
独特ななリズム・セクションの前半部分と溜めの効いたリズム・セクションがユニークな楽曲。
前半の独特なリズム・セクションが特にインパクトがあります。『ワウのかかったトランペット』もユニークだと思います。3:24に後半に繋がるところの『キーボード』と『エレクトリック・ギター』のファンキーなプレイは特にカッコいいと思います。後半の溜めの効いたパートもソロ・パートもそれぞれ個性が出ていて楽しめると思います。
2. Little Church
幻想的な空間サウンド。
『エルメート・パスコアール』が作曲している楽曲。『口笛』『ヴォイス』『トランペットのアンサンブル・サウンド』は何とも言えない静寂な雰囲気を出しています。『オルガン』で全体を包み込んでいて幻想的な楽曲になっています。『リード・ベース・サウンド』もよいフィーリングを出していると思います。
3. Medley: Gemini/Double Image
ファズ・ギターが印象的なスロー・テンポのパワフルな楽曲。
スロー・テンポで迫力がある楽曲。『最大に歪んだファズ・ギター』『トランペット』が強力に響きがあり、とても印象的で迫力があります。『ビッチェズ・ブリュー』の候続編のような楽曲です。聴きごたえがあります。
4. What I Say
シンプルで疾走感のあるグルーブ感の楽曲。
軽快でファンキーは『キース・ジャレット』の『リード・キーボード』と『伴奏』で包み込まれていて、よいフィーリングに仕上がっていると思います。リレーをするようにソロを行っています。終盤には『ドラム・ソロ』もあり最後まで一気に聴けてしまいます。
5. Nem Um Talvez
柔らかな雰囲気の幻想的な空間サウンド。
『エルメート・パスコアール』が作曲している楽曲。『リトル・チャーチ』と同じく幻想的なサウンドになっていますが、丸みのある柔らかいメロディーに仕上げていると思います。『パーカッションをディレイをかけたサウンド』も印象的です。
6. Selim
穏やかで幻想的なサウンド。
『トランペット』と『ヴォイス』で心地よい幻想的なサウンドを表現しています。スムーズで聴きやすいと思います。
7. Funky Tonk
『ディレクションズ』のベース・ラインをベースに構築したファンキーな楽曲。
前半は『ディレクションズ』のベース・ラインをベースにして展開していますが、中間より徐々に『リズム・テクスチャー』を変化させています。また中間はフリーな演奏を行っていますが、最後はきっちりと様式が整って終了しています。『キース・ジャレット』の曲を終了に持っていくキーボードの展開は見事だと思います。
8. Inamorata And Narration by Conrad Roberts
タイトでカッコいいベース・ラインがよいファンキー・ソング。
タイトでカッコいいベース・ラインを中心にクールに素晴らしいソロ・プレイで繋いでいます。終盤にナレーションも入っていてよい感じで終了しています。アルバムの中で一番カッコよくクールに仕上がった楽曲だと思います。
マイルス・デイヴィス関連記事はこちらになります。
『静寂なフュージョン・ミュージックの幕開け『In A Silent Way』 / Miles Davis』
『ハイテンションで破壊的なパフォーマンス『Live At The Fillmore East, March 7, 1970: It's About That Time』 / Miles Davis』
『タイトでクールなファンク・サウンド『A Tribute To Jack Johnson』 / Miles Davis』
『クールで熱いライブ・アルバム『We Want Miles』 / Miles Davis』
『クールで最高の完成度を誇るアルバム『TUTU』/ Miles Davis』
ウェイン・ショーター関連記事はこちらになります。
『瞬発的に鋭く反応する新進ジャズ『Footprints Live!』 / Wayne Shorter』
ジョー・ザビヌル関連記事はこちらになります。
『ジャズ・ファンクの名盤『Mercy, Mercy, Mercy! Live At “The Club”』 / Cannonball Adderley』
『実験的なバンドの完成度を誇る『Heavy Weather』 / Weather Report』
今回、1971年に発売された『Miles Davis』のアルバム『Live-Evil』をご案内させて頂きました。
機会がありましたら、ご試聴頂きたいと思います。