こんにちはteruruです。
今回は1972年に発売された『Yes』のアルバム『Close To The Edge』をご案内致します。
筆者が初めにこのアルバムを聴いたのは、中学生の時でした。あまりにもオリジナリティー高さと自然発生的な音楽に感動した事を今でも覚えています。テンポや楽曲のキーもコロコロ変わるのに楽曲なのにメロディーも自然になじんで聴けてしまう驚きもありました。
前作『フラジャイル』では楽曲とメンバーそれぞれのソロを織り交ぜたアルバムでしたが『クロース・トゥ・ジ・エッジ』は余計な部分がなく、たった3曲ですが『完璧な構成』『パフォーマンス』になっています。
3曲ともに10分または10分以上の大作になっており『クロース・トゥ・ジ・エッジ』と『アンド・ユー・アンド・アイ』は組曲になっています。こういった組曲またはコンセプト趣向は、よく『プログレッシブ・ロック』で使用される音楽形式になります。
近年『クロース・トゥ・ジ・エッジ』の『CDリマスター版』や『リミックス版』が出ていますが、音質的には特に大きな違いはありませんでした。デジタルリマスターされているCDであれば良好だと思います。
自然発生的に響く完璧な構成になったポイント
- Yes史上最もBestなメンバーでのアルバム制作
- 音楽の方向性が定まらないまま、奇跡的に完成したアルバム
- 実験的であるが、全く無駄のない完璧な仕上がり
Yes史上最もBestメンバーでのアルバム制作
前作『フラジャイル』と同様のメンバーでレコーディングされています。特にこのレコーディングメンバーの名前をみると世界トップクラスのミュージシャンで制作されています。
メンバーは
『ハイトーンで澄み切ったレイドバックしないエンジェル・ボイス』のヴォーカルリスト『ジョン・アンダーソン』。
『リッケンバッカー』の『ベース』を使用して『イコライザーで中音域を強調したトーン』で存在感あるベースをプレイするベーシスト『クリス・スクワイア』。
1つの曲に対して『エレクトリック・ギター』『アコースティック・ギター』『エレクトリック・シタール』『ポルトガル・ギター』『ペダル・スティール』等に持ち替えてプレイを行い、どんなジャンルでも独自のスタイルでプレイを行うギター・リストの『スティーブ・ハウ』。
『クラシック・ミュージック』の素養があり、1つの曲で『シンセサイザー』『オルガン』『メロトロン』『クラビネット』『ピアノ』をカラフルに使用して、どんなジャンルでも独自のスタイルでプレイを行い、スリリングに手数の多いプレイを多用するキーボード・プレイヤーの『リック・ウェイクマン』。
『ジャズ・ミュージック』をベースに持ち、『どの曲でも複雑な変拍子のテクスチャーを駆使して、それを自然に演奏してしまう』、どちらかというと『パーカッション・プレイヤー』のようなプレイが特徴であるドラマーの『ビル・ブラフォード』。
特に『スティーブ・ハウ』『リック・ウェイクマン』『ビル・ブラフォード』は『世界トップクラスのミュージシャン』であると思われますので、楽曲を作っている要素も彼らの癖やプレイ・スタイルも大きく反映されていてそれがよい結果が出ていると思います。
音楽方向性が定まらないまま、奇跡的に完成したアルバム
アルバム『クロース・トゥ・ジ・エッジ』のレコーディング背景として、全く楽曲が出来ていない状態でスタジオに入りレコーディングを行っていたようです。『当時のイエスのレコーディング方法』として、5人で30秒プレイして「次はどうしよう」という事でミーティングを行い、再度5人で30秒プレイしてはミーティングの繰り返しで完成したアルバムのようです。
当時は現在のようにデジタル機器で処理が出来る時代ではなかったので、『マスターテープを切り貼りしてテープを編集していた』ようです。現在だったら、マウスでクリックするだけで編集が可能ですが、当時はそのような方法で行っていたようです。この方法は『イエス』の音楽を作る上で重要な要素であったようです。この作業は、当時の『プロデューサー』の『エディー・オフォード』が担当していました。
このようなカオス状態は約2カ月ぐらい続けられ奇跡的に完成されたアルバムのようです。
このレコーディングの後に、『レコーディング問題』や『人間関係の問題』で『ビル・ブルフォード』は『プログレッシブ・ロック・バンド』の『キング・クリムゾン』に移籍する事になります。
実験的であるが、全く無駄のない完璧仕上がり
アルバム『クロース・トゥ・ジ・エッジ』に関しては、不要な部分が全く見当たらないと思います。
『クロース・トゥ・ジ・エッジ』のイントロの『環境サウンド・エフェクト』に約1000トラック録音したり、『シベリアン・カートゥル』ではドップラー効果を出す為に、マイクをグルグル回しながらレコーディングしたり機材的な実験。
音楽的には『レゲエ』『サイケデリック』『クラシック』『フォーク』等のさまざまな要素の他に細かく変拍子が組み込まれています。
後期の『ビートルズ』のような実験的なレコーディングを行っていたとも言えると思います。
『イエス』の場合、『ビートルズ』以上に個々の演奏力が優れているので、演奏力が更に実験的な要素を加えていたと思っています。色々な視点から楽しめるアルバムだと思っています。
その他の音源はこちらになります。
Yes / Live At Toronto Ontario 31 October 1972
Yes / Live At Ottawa Ontario 1 November 1972
Yes / Live At Durham North Carolina 11 November 1972
Yes / Live At Greensboro North Carolina 12 November 1972
Yes / Live At Athens Georgia 14 November 1972
Yes / Live At Knoxville Tennessee 15 November 1972
Yes / Live At Uniondale New York 20 November 1972
Albumlist |
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1. Close To The Edge |
2. And You And I |
3. Siberian Khatru |
Players |
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Jon Anderson – Vocal |
Steve Howe – Electric Guitar, Acoustic Guitar, Electric sitar, Pedal Steel |
Chris Squire – Bass |
Rick Wakeman – Piano, Mellotron, Moog Synthesizer, Organ |
Bill Bruford – drum, percussion |
楽曲解説
1. Close To The Edge
4つから成り立つ組曲
季節が変わるかのように、さまざまな音楽が展開される感動的な楽曲
1. The Solid Time Of Change
『環境エフェクト』から始まり、怒涛の『スティーブ・ハウ』の『ギター・ソロ』が始まります。『フランク・ザッパ』並みのかなりエキサイティングなソロを展開しています。ヴァース・パートで、『スティーブ・ハウ』が『エレクトリック・シタール』に持ち替えてグルーブ感のあるカッティング・リズムは印象的です。ヴォーカル・メロディーは軽やかで親しみやすいと思います。
2. Total Mass Retain
The Solid Time Of Changeの『リズム・テクスチャーを変化させたパート』。『ベース』で『スラッピングのようなアプローチ』を行っていてインパクトがあります。要所でシンセサイザーでアクセントをつけて緊張感を高めていると思います。最後の優しいイメージのリフは安らぎを与えていると思います。
3. I Get Up, I Get Down
再度、『環境エフェクト』が入り、『賛美歌のようなヴォーカル』が始まり、『アカペラのハーモニー』で包んでいきます。静寂な雰囲気を出していると思います。『装厳な教会的なオルガンの伴奏』『雰囲気を変えるようなムーグ・シンセサイザー・ソロ』『鋭いキレキレのハモンドオルガン・ソロ』が続き、かなり『リック・ウェイクマン』が比重が大きいパートです。
4. Seasons Of Man
The Solid Time Of Changeの構成に戻り、『ピアノ』と『エレクトリック・シタール』の『パーカッシブなリズム』でバックアップしています。The Solid Time Of Changeと違った響きを出しています。『マーチング』のような形で終了します。
歌詞
『ヘルマン・ヘッセ』の『シッダールタ』という小説のイメージを基に書かれています。現世から黄泉へ旅立つ様子、感情を比喩的に表現しているものだと解釈しています。死に対する怖さ、恐怖に対する危機で「死にたくない」という感情を表現している内容。
2. And You And I
4つから成り立つ組曲
フォーク・ミュージックやクラシック・ミュージックが交互に展開するような美しい楽曲
1. Cord Of Life
『フォークソング』のような楽曲に『賛美歌のようなメロディー』を乗せていて心地よいフィーリングを出しています。ベースとドラムの「ダダダダ、ダダ」とプレイしているところが印象的に響きます。
2. Eclipse
『クラシック・ミュージック』のような、または『バレー・ミュージック』のようなパートになります。美しいメロディーパートです。
3. The Preacher The Teacher
『フォークソング』の流れに戻り、『アコースティック・ギター』でリズミカルに細かく組み立てています。中間には『知的なムーグ・シンセサイザー・ソロ』がクールに展開されています。
4. The Apocalypse
『賛美歌のようなヴォーカル』と『アコースティックギター』で完結します。
歌詞
人生についての話だと思われます。あなたとわたしの視点から牧師や教師と比べているが、比べた結果として、あなたとわたしで未来に向かっていこうという語っている内容です。
3. Siberian Khatru
おおよそ9分ほどの大作
物語のように展開されます
軽やかでシンフォニックでグルーブ感のよい心地よい楽曲
1. ジミ・ヘンドリックスのようななクランチなギターオープニングパート(0:00)
『ジミ・ヘンドリックス』のようなクランチなギターがインパクトを与えています。
2. キーボードストリングス主体パート(0:10)
『ストリングス的なキーボード・サウンド』の流れに乗って、『うねうねと動くベース・サウンド』がとてもユニークだと思います。
3. ギターリフパート(0:54)
グルーブ感のある可愛い感じのギターリフでイメージががらりと変わります。
4. ギターリフパート(2:01)
5. コーラスパート(2:50)
コーラスに合わせて、『カッティング・リズム・ギター』がアクセントを与えています。
6. エレクトリック・シタール、キーボード、ペダル・スティール、ギター・ソロパート(3:04)
『エレクトリック・シタール・ソロ』『チェンバロ・ソロ』『ペダルスティールソロ』『ギターソロ』を鮮やかに展開されます。この辺りの構成は流石です。
7. 静寂なパート(4:15)
『ライド・シンバル』の「カチカチカチカチ」と繊細に刻んでいるところもよいアレンジだと思います。
8. ギターリフパート(4:49)
最初のギター・リフを少しアレンジしてプレイをしていてフックが効いていると思います。
9. キーボードフルートメロディーパート(5:22)
『ビル・ブルフォード』の『スネアの擦り切れるようなプレイ』も印象的です。
10. キーボード・ストリングス主体パート(6:19)
『ギター・ソロ』が『フェード・アウト』される形で終了します。
全体として
ヴォーカルに関してはほとんど『ヴォイス・アンサンブル』でアプローチしています。
歌詞
『シベリア』のイメージを比喩的に語っている内容です。
その他イエス関連記事はこちらになります。
『究極と言う名の神秘的なアルバム『Going For The One』/ Yes』
『さらなる飛躍をしたYesサウンド『An Evening Of Yes Music Plus』/ Anderson Bruford Wakeman Howe』
『新たな要素が光るライブ・アルバム『House Of Yes: Live From House Of Blues』 / Yes』
『完璧なライブ・パフォーマンス『Live At Montreux 2003』 / Yes』
『イエス・ミュージックらしく構築された名盤『Fly From Here』 / Yes』
今回は1972年に発売された『Yes』のアルバム『Close To The Edge』をご案内致しました。
今聴いても時代を超える傑作だと思っています。
また聴いた人が何か感じることが出来るアルバムだと思っています。ぜひご試聴お試しください。