こんにちはteruruです。
今回は、『Yes』の1977年に発売されたアルバム『Going For The One』をご案内させて頂きたいと思います。
日本で発売された時のタイトルが『究極』と言う名前で発売されました。それは強ち間違えではないタイトルだと思います。
筆者自身が最初に試聴した際に、全くこのアルバムの良さはわかりませんでした。前回ご案内しましたイエスのアルバム『クロース・トゥ・ジ・エッジ』では最初から最後まで集中力が切れることなく聴くことができましたが、初聴時は全く理解が出来ませんでした。繰り返し聴いている内に『ゴーイング・フォー・ザ・ワン』が『クロース・トゥ・ジ・エッジ』と並ぶくらい凄いアルバムだと現在では認識しています。
このアルバムの特徴として、とてもモダンで神秘的なイメージがあります。物凄く独創的なサウンドに仕上げているにもかかわらず、素晴らしいメロディーをつけている点は凄いと思いました。そこがイエスの凄さでもあると思っています。特に『ターン・オブ・ザ・センチュリー』『アウェイクン』は筆者の中で最高の楽曲です。他の楽曲も捨て曲なしです。
またこのアルバムを実際聴いてみると今までにないくらい、生き生きとしたサウンドで、『イエス』が楽しんで制作したアルバムである事がわかります。実際ブートレッグ映像にも残っています。一度聴いただけでは、なかなか理解できないかもしれませんが、楽しんで頂きたいと思います。
究極で神秘的なアルバムのポイント
- パトリック・モラーツとの曲作り
- リック・ウェイクマン復帰とレコーディング参加
- スイスでのレコーディング
パトリック・モラーツとの曲作り
1977年にアルバムが発売されましたが、前任の『キーボードプレイヤー』の『パトリック・モラーツ』のインタビューによると、既に1976年時点でほとんどのパートが仕上がっていたようです。楽曲のプロトタイプ的な部分は、『パトリック・モラーツ』がいる段階で出来ていたという事になると思われます。
ただ『パトリック・モラーツ』は『ジャス・フュージョン・ミュージック』をルーツに持つミュージシャンである為、もしそのままレコーディングに参加していたら、全く違った雰囲気になっていた可能性があります。
『クラシック・ミュージック』を基盤にする『リック・ウェイクマン』とは対極的なプレイヤーになるので、『ヨーロッパ的で規律的なサウンド』にならなかったと思います。
『パトリック・モラーツ』の場合、溢れすぎるアイディアをまとめきれずにメンバーと揉めて脱退したようです。
リック・ウェイクマン復帰、レコーディング参加
『リック・ウェイクマン』が復帰した事によって、バンドの雰囲気が常に良かったようです。
『スイス』滞在中に『コメディアン』のように、いつもバンドのメンバーを笑わせていたようです。『リック・ウェイクマン』の場合、音楽的な部分や人間的な部分またはその他の部分に納得いかない事ががあると、メンバーと争うのではなく脱退を選んでしまうようです。
『キーボードの音質的』にも、『パトリック・モラーツ』は『”パピヨン”や”クレド”などのサウンド名をつけて幻想的なサウンドを出すタイプ』、『リック・ウェイクマン』は『楽曲に対して美しくよく響くキーボードの音色を選び、楽曲に調和した上で自由にプレイするタイプ』ですので、全く違ったサウンドになったのではないかと思います。
『リック・ウェイクマン』は、『クラシック・ミュージックの素養』があるので、『響きの良い音を選んで、楽曲に合った分散コードやスケールを全くミスなしにプレイ出来るプレイヤー』であるので、このアルバムには適した人物だと思っています。
スイスでのレコーディング
当時のインタビュー記事を見ていると、メンバーから必ず”スイス”というキーワードが入っていました。
本来は『イギリス出身のバンド』ではあるが、重圧なイギリスの税金対策の為にスイスでレコーディングを行っていたようです。午前中にスキーを行い、午後にプレイする。または夕方まで曲作りを行い、その後にレコーディングを行っていたようです。
ほとんど曲自体は完成していたので、どのようなアレンジで、どのようにプレイするかのみでしたのでスムーズの進んでいったようです。『クロース・トゥ・ジ・エッジ』のレコーディングでは混沌とした状況でレコーディングを行っていましたが、このアルバムではスムーズに行えていたようです。
メンバーの演奏力も絶頂期である事と当時の『プログレッシブ・ロック・ブーム』も終わりかけていた時期でもあり、このアルバムは最盛期の最後の大作アルバムになってしまいました。次のアルバム『トーマト』ではコンパクトでシンプルにまとまった仕上がりであるが、メンバーは納得いかなような記事が見受けられます。
その他の音源はこちらになります
Yes / Going For The One Sessions 1976 Part1
Yes / Going For The One Sessions 1976 Part2
Yes / Going For The One Sessions 1976 Part3
Albumlist |
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1. Going for the One |
2. Turn Of The Century |
3. Parallels |
4. Wonderous Stories |
5. Awaken |
Players |
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Jon Anderson – Vocal, Harp |
Steve Howe – Electric Guitar, Acoustic Guitar, vachalia, Pedal Steel |
Chris Squire – Bass |
Rick Wakeman – Piano, Keyboards, Moog Synthesizer, Organ |
Alan White – drum, percussion |
楽曲解説
1. Going for the One
浮遊感のあるロックンロール的な楽曲。
『ムーグシンセサイザー』をかなり使用しているので、浮遊しているような感覚を感じると思います。『スティーブ・ハウ』はギターは弾かずに『ペダル・スティール』で『スライド・バー』を持ってプレイしていて、更に浮遊感を出しています。『ヴォーカルもかなりハイトーン』で歌われていますが、無理なく歌えているところは凄いです。
歌詞
『様々なスポーツ(競馬、カヌー、宇宙的な比喩)』において究極を求める事を表現している内容だと思います。
2. Turn of the Century
フォーク・ミュージックとクラシック・ミュージックを合わせたような楽曲。
1. モダンなフォーク・ミュージック的なパート(0:00)
イントロは絶品なギターソロです。ヴォーカルのメロディーも美しく素晴らしいです。
2. モダンなクラシック・ミュージック的なパート(3:48)
『ピアノ』と『エレクトリック・ギター』の『インター・プレイ』は最高モダンで美しいです。『流れるようなベース・プレイ』も素晴らしいです。
3. マーチング的なパート(5:14)
『エレクトリック・ギター』で『ディレイ』をかけていてレーザー光線のように聞こえてよい感じになっています。モダンな雰囲気から明るい雰囲気に変わっていくアレンジがよいと思います。
4. アコースティック・ギターソロ(6:52)
感動的で『モダンなギター・ソロ』を展開していて素晴らしいです。
歌詞
冬に亡くなった妻の石像を作ろうとする彫刻家の物語のようです。オペラ『ラ・ポエーム』からヒントを得たそうです。
3. Parallels
パイプ・オルガンをバックにグルーブ感のあるベースが印象的なロックソング。
『マーチング』のような雰囲気で曲が進行していく楽曲です。『自由なリードギター』が展開され、ところどころ聴こえる『パーカッション(コンガス)』が良い感じを出しています。『浮遊するオルガン・ソロ』も素晴らしいと思います。
歌詞
精神的な愛について語っているようです。
4. Wonderous Stories
ルネッサンス・ミュージックとフォーク・ミュージックを合わせたような楽曲
『スティーブ・ハウ』は『vachalia』と言うマンドリンのような楽器でプレイしています。キーボードも『チェンバロ』や『ストリングス』のようなサウンドを出して『ルネッサンス・ミュージック』のようなイメージに近づけていて、よいフィーリングを出していると思います。『エレクトリック・ギター』のパーカッシブなソロも良い味を出していると思います。
歌詞
人生の喜びを夢の続きのようなイメージで表現している内容であるようです。なので”Wonderous”という言葉の表現が使われているのかもしれません。
5. Awaken
約15分ほどの大作。
インドまたはチベットなイメージの音楽をクラシック・ミュージック的に包み込んでいるような楽曲。
1. ピアノソロ(0:00)
2. ストリングス的なパート(0:35)
『パトリック・モラーツ』のアイディアの様です。『神秘的に壮大に響くヴォーカル』がよいです。
3. 変拍子が効いたギターリフパート(1:33)
『インドまたはチベットの様なイメージのギター・リフ』が独特なイメージを構築しています。
4. ギターソロパート(2:47)
『かなり鬼気迫るような白熱したギターソロ』になります。
5. 変拍子が効いたギター・リフ・パート(3:55)
6. 4/3拍子の優雅なワルツのようなパート(5:12)
『オルガン・フレーズ』が流れるようでとても心地よいプレイが印象的です。
7. オルガンソロ(4/3拍子)パート(6:38)
『宙に舞う様なオルガン・ソロ』を展開しています。バックでは『ハープ』の音色がよいアクセントになっています。
8. 無調パート(10:35)
『完璧に調和するヴォーカルメロディー』をつけている部分は流石です。『オルガン』や『オルガン・ソロ』で無調パート壮大に盛り上げています。
9. ストリングス的なパート(13:27)
歌詞
人生についてを悟っている内容だと思われます。色々の比喩が盛り込まれているので、それぞれの解釈にお任せします。
その他イエス関連記事はこちらになります。
『自然発生的に響く完璧な構成のプログレッシブ・ロック名盤『Close To The Edge』/ Yes』
『さらなる飛躍をしたYesサウンド『An Evening Of Yes Music Plus』/ Anderson Bruford Wakeman Howe』
『新たな要素が光るライブ・アルバム『House Of Yes: Live From House Of Blues』 / Yes』
『完璧なライブ・パフォーマンス『Live At Montreux 2003』 / Yes』
『イエス・ミュージックらしく構築された名盤『Fly From Here』 / Yes』
今回はYesの1977年に発売されたアルバム『Going For The One』をご案内させて頂きました。
機会がありましたらご試聴頂ければと思います。