• 完璧なグルーブ感で圧倒するライブ『Live Around The World』 / Miles Davis

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    今回は、1996年に発売された『Miles Davis』のライブ・アルバム『Live Around The World』をご案内させて頂きます。

    このアルバムは『マイルス・デイヴィス』が1991年に他界した後に発売された作品で『1988年~1990年』までの『ベスト・テイク』をチョイスされて制作されたアルバムになります。

    以前ご案内させて頂きました『マイルス・デイヴィス』のアルバム『TUTU』や次作の『アマンドラ』の楽曲が中心に収められています。

    この時期の『マイルス・デイヴィス』のバンドは、これらのアルバムのレパートリーを最大限に発揮できるメンバーでプレイされており、最高に心地よく爽快になれると思います。

    パワフルな演奏も素晴らしいのですが、実験的な楽曲も加えられていて、飽きの来ない内容になっています。

    初めて視聴される人でも十分に楽しめるアルバムです。

    Miles Davis / Live Around The World チャプター切り替え可能です。

    完璧なグルーブ感で圧倒するライブ・アルバムのポイント

    • 完璧のグルーブ感を維持した凄腕ドラマーと凄腕ベーシスト
    • 楽曲にフィットした演奏を繰り広げるフロント・メンバー
    • 実験的な楽曲アレンジがユニークで飽きさせない

    完璧のグルーブ感を維持した凄腕ドラマーと凄腕ベーシスト

    特に1988年からドラマ―の『リッキー・ウェルマン』とベーシストの『ベニー・リートベルト』が参加したライブ作品はどれもが素晴らしいと思います。

    『リッキー・ウェルマン』は、テンポも遅れることがなく完璧なグルーブ感を維持しながら、この時期のライブ・レパートリーを最良の状態まで高めていると思います。

    『ベニー・リートベルト』は、クールで確実なプレイ・テクニックを持っているベーシストでバランス感覚がよいと思います。『マイルス・デイヴィス』のバンド退団後は『サンタナ』のバンドでプレイしています。

    とにかく、2人が参加してから『スタジオ・アルバム』や『以前のライブ・アルバム』に比べて自然に響くところがよいと思っています。

    楽曲にフィットした演奏を繰り広げるフロント・メンバー

    この時期のフロント・メンバーは、アルト・サックスとフルートの『ケニー・ギャレット』、エレクトリック・ベースでエレクトリック・ギターの様なプレイを行っている『フォーリー』が主要なメンバーでした。

    彼らは、余計なテクニックを披露しようとはせずに、楽曲の良さを引き出すための個性があるプレイやトーンに気を使ってプレイしている印象があります。

    『ケニー・ギャレット』でしたら『ヒューマン・ネイチャー』での野性的なパワフルなプレイは、なかなか熱いプレイだと思います。本来テクニカルなプレイヤーですが、感情がこもっていてとても良いです。

    『フォーリー』でしたら『TUTU』等での丸みがあるギター・トーンでフレーズがアウトしそうになりそうだが、ギリギリのインラインを保ちながらのプレイは楽曲に完全にマッチしていると思うので、『マイルス・デイヴィス』が現役復帰後ではベストなギター・プレイヤーだと思っています。

    当時、1989年ぐらいからライブに参加していたキーボード・プレイヤーの『ケイ・アカギ』のスムーズで流れるようなスリリングなキーボード・プレイも注目ポイントだと思います。『チック・コリア』的でも『キース・ジャレット』的でもないプレイ・スタイルでクセのないスムーズなプレイが楽しめます。

    実験的な楽曲アレンジがユニークで飽きさせない

    この時期は、既にライブ・レパートリーは、ほぼ固まっているが『イントルーダー』『ニュー・ブルース』『リンクル』で実験的なプレイを行っていると思います。

    『イントルーダー』は、どことなく『プリンス』的でユニークなアレンジです。その後の音楽の方向性を示しているかのような楽曲だと感じます。

    『ニュー・ブルース』は、元々『スター・ピープル』という『マイルス・デイヴィス』のアルバムのタイトル曲でしたが、ライブ・アルバムの表記では、名前が変更されていました。『スター・ピープル』のアレンジと比べると、コード・アレンジが明確になり、自然発生したような楽曲に進化しているように感じます。

    『リンクル』は、特にライブごとに、アレンジやリズムを変えてプレイされていて、この時代の『マイルス・デイヴィス』のライブは、バンドの一体感が素晴らしいと感じます。

    この時期には、疾走感がありダイナミックな『カーニバル・タイム』、ロック・バンド『TOTO』とレコーディングした静寂な響きが素敵な『ドント・ストップ・ミー・ナウ』等の素晴らしい楽曲があり、ぜひとも収録してほしかったですね。

    Miles Davis / Montreux Jazz Festival 1988
    Miles Davis / Montreux Jazz Festival 1989
    Miles Davis / Miles In Paris 1989
    Albumlist
    1. In A Silent Way
    2. Intruder
    3. New Blues
    4. Human Nature
    5. Mr. Pastorius
    6. Amandla
    7. Wrinkle
    8. Tutu
    9. Full Nelson
    10. Time After Time
    11. Hannibal
    Players
    Miles Davis – Trumpet
    Foley – Lead Bass Guitar
    Kenny Garrett – Alto Sax (1,2,3,4,5,7,9,11) Flute (8,10)
    Rick Margitza – Tenor sax (6)
    Adam Holzman – Keyboards (1,2,3,4,6,9,10)
    Robert Irving III – Keyboards (3,9)
    Kei Akagi – Keyboards (5,6,7,8,10)
    Joey DeFrancesco – Keyboards (1,2,4)
    John Beasley – keyboards (5)
    Deron Johnson – keyboards (11)
    Benny Rietveld – Bass (1,2,3,4,5,6,9,10)
    Richard Patterson – Bass (7,8,11)
    Ricky Wellman – Drum
    Marilyn Mazur – Percussion (1,2,3,4,9)
    Munyungo Jackson – Percussion (5,6,10)
    Erin Davis – Percussion (7,8)

    楽曲解説

    1. In A Silent Way
    美しいメロディーと静寂なコード進行が素敵な楽曲。
    オリジナルは『マイルス・デイヴィス』のアルバム『イン・ア・サイレント・ウェイ』の収録曲。
    楽曲については、下側のリンク『静寂なフュージョン・ミュージックの幕開け『In A Silent Way』 / Miles Davis』を参照して頂きたいと思います。
    『Live Around The World』では
    キーボードでストリングス的に伴奏されていて『マイルス・デイヴィス』の囁くようなトランペットと『フォーリー』のリズム・ギターで前奏曲らしくプレイされていてよいと思います。鮮やかな前奏曲に仕上がっています。
    2. Intruder
    プリンス風なファンキーでポップな楽曲
    独特なリズムとシンセサイザーのリズムが『プリンス』風で、今後の『マイルス・デイヴィス』の音楽性を提示するかのようなサウンドだと思います。『ドラム』と『パーカッション』の息が合っていて心地よいグルーブ感です。全体的にスリリングにプレイされています。
    3. New Blues
    ダークで落ち着いた雰囲気で楽しめるブルース的な楽曲。
    元々オリジナルは『マイルス・デイヴィス』のアルバム『スター・ピープル』のタイトル曲。
    『Live Around The World』では
    タメの効いた『ベースライン』と『オーケストラル・ヒッツ』の効いたキーボード、柔らかい『ストリング風』のキーボードで良い感じに包み込んでいて心地よいです。『マイルス・デイヴィス』もクロマチックなフレーズのトランペット・フレーズで素晴らしいプレイを行っています。『フォーリー』の丸みのあるギター・トーンでの流れる様なプレイも良いです。年を重ねるごとに楽曲の仕上がりが良くなっています。
    4. Human Nature
    クールで落ち着いたポップ・ソング。
    『マイケル・ジャクソン』のアルバム『スリラー』に収録されていた楽曲で、『マイルス・デイヴィス』のアルバム『ユアー・アンダー・アレスト』の収録曲。
    メロディがクールで優しく印象的です。やはり『マイルス・デイヴィス』の歌うようなリード・トランペットを楽しむための楽曲だと思います。『ケニー・ギャレット』のサックスに掛け合いのように繋いで、野性的な『アルト・サックス』のプレイは、バッチリ楽曲にハマっていると思います。
    5. Mr. Pastorius
    悲しげなムードのバラード・ソング。
    オリジナルは『マイルス・デイヴィス』のアルバム『アマンドラ』の収録曲。
    ソロでトランペットをプレイしている様なフィーリングを感じさせる楽曲。以前の『マイルス・デイヴィス』のアルバム『Siesta』または『Sketches Of Spain』を感じさせます。クールでカッコよい仕上がりだと思います。
    6. Amandla
    ゴージャスで味わいのあるバラード。
    オリジナルは『マイルス・デイヴィス』のアルバム『アマンドラ』の収録曲。
    メロディが印象的、また味わいがある楽曲で『マイルス・デイヴィス』の囁くようなトランペットの雰囲気を繋ぐように『アルト・サックス』~『エレクトリック・ギター』にプレイされています。楽曲の良さが光ります。素晴らしい出来だと思います。
    7. Wrinkle
    実験的でファンキーでメカニカルなイメージを感じさせる楽曲。
    オリジナルは『マイルス・デイヴィス』のアルバム『ラバーバンド』の収録曲。
    アップテンポでダイナミックな楽曲。ライブの度にテンポを変えたり、アレンジを変えたりして、毎回楽しめる楽曲です。特にドラムの『リッキー・ウェルマン』が加わってからのライブでは、特にスリリングに演奏されていて良いです。リズム・セクションが楽しめます。
    8. Tutu
    ずっしりとした重みのグルーブ感のある楽曲。
    オリジナルは『マイルス・デイヴィス』のアルバム『TUTU』の収録曲。
    楽曲については、下側のリンク『クールで最高の完成度を誇るアルバム『TUTU』/ Miles Davis』を参照して頂きたいと思います。
    『Live Around The World』では
    『マイルス・デイヴィス』の囁くようなトランペットでかなり吹きまくっています。『ケイ・アカギ』のモーダルでスリリングな『キーボード・ソロ』でかなり盛り上がります。続く『フォーリー』のファジーなトーンの『ギター・ソロ』など聴きどころ満載です。
    9. Full Nelson
    プリンス的なファンキーでパレード・ソング的な楽曲。
    オリジナルは『マイルス・デイヴィス』のアルバム『TUTU』の収録曲。
    楽曲については、下側のリンク『クールで最高の完成度を誇るアルバム『TUTU』/ Miles Davis』を参照して頂きたいと思います。
    『Live Around The World』では
    細かいアレンジが施されていて、とてもスムーズですが、楽曲の素晴らしさが出ている演奏だと思います。
    10. Time After Time
    落ち着いたナチュラルなバラード・ソング。
    『シンディ・ローパー』のアルバム『シーズ・ソー・アンユージュアル』に収録されていた楽曲で、『マイルス・デイヴィス』のアルバム『ユアー・アンダー・アレスト』の収録曲。
    『Live Around The World』では
    とにかく『マイルス・デイヴィス』の囁く様に歌い上げる『トランペット』が美しく素晴らしいです。
    11. Hannibal
    ダークなムードのバラード・ソング。
    オリジナルは『マイルス・デイヴィス』のアルバム『アマンドラ』の収録曲。
    『Live Around The World』では
    オリジナルに近いイメージでプレイされています。コードの流れを追ってみて、1980年代ということを考えると、かなり新進的な楽曲だと感じました。『マイルス・デイヴィス』のクールで無駄のないプレイや、『ケニー・ギャレット』の味わいのある『アルト・サックス』プレイは素晴らしいと思います。

    1990年に『マイルス・デイヴィス』は死去しますが、『ドゥー・バップ』という『ヒップ・ホップ』のアルバムを遺作として、未完成の状態をプロデューサーの『イージー・モー・ビー』が仕上げて発表しました。クールで『マイルス・デイヴィス』らしい素晴らしいアルバムでしたが、これが本当に『マイルス・デイヴィス』が望んだサウンドかはわかりません。

    当時としては、『プリンス』の様なポップ・サウンドと『ヒップ・ホップ』サウンドを融合したサウンドを表現したかったのかもしれません。ライブでもどのような進化したサウンドになったかも想像ができないので、その先を聴いてみたかったので残念です。

    マイルス・デイヴィス関連記事はこちらになります。
    『静寂なフュージョン・ミュージックの幕開け『In A Silent Way』 / Miles Davis』
    『ハイテンションで破壊的なパフォーマンス『Live At The Fillmore East, March 7, 1970: It's About That Time』 / Miles Davis』
    『タイトでクールなファンク・サウンド『A Tribute To Jack Johnson』 / Miles Davis』
    『反転的なコンセプト・アルバム『Live-Evil』 / Miles Davis』
    『クールで熱いライブ・アルバム『We Want Miles』 / Miles Davis』
    『クールで最高の完成度を誇るアルバム『TUTU』/ Miles Davis』

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